042.CD/MD?
「はい」
「…これ、何?」
渡された小さく薄いそれを見下ろし、首を傾げる。
「この前言うてたやん。いい曲やって」
「言ったけど…何故に2種類?」
手渡された二つを交互に見つめ、そう問いかける。
一つは手の平サイズの四角くて薄いMDで、もう一つはそれよりも大きなケースに入っている円盤…CDだ。
確かに、ラベルに書かれているアーティストのこの曲を「いい曲だ」と褒めたこともあるし、持っていると言われて貸してくれと頼んだ覚えもある。
だが、何故2種類?
「いやー…持っとるのがどのタイプか忘れてしもてん。確かMDも持っとったと思ったんやけどな、一応」
「…わざわざ作ってくれたわけ?」
「聞きながら編集したで。久しぶりに聞いてもやっぱええ曲やわ。ついでに、何種類か自分の好みの曲も入れてあるさかい」
「……………そっか」
二枚のそれを見下ろしつつ、彼女は頷く。
何故か、少し戸惑っている様子の彼女に、今度は成樹が首を傾げた。
「何や余計なことでもしたか?」
「いや…。編集してくれたのって、MDの方だよな」
「せやで。CDは買った時のままやから」
言いにくそうに何度か視線を彷徨わせてから、決心したように口を開く彼女。
「…ごめん。持ってるMD、この間壊れた」
「…………………」
「…………………」
「…………………山勘が外れたわ」
「ごめん!先に言っておけばよかった!」
思いの外落ち込んでいる様子の成樹に、彼女は慌てた様子で謝罪を繰り返す。
折角時間を費やして編集してくれたというのに、それが無駄になってしまったのだ。
いくら謝罪してもし足りないくらいである。
「本っ当にごめん!お詫びに今日の夕飯奢るから!!」
「いや、別にええねん。俺が好きでやったことやし」
「そうだけど…何か、悪いし。じゃあ、ご馳走するってのは?」
「ホンマ?せやったらご馳走になるわ」
コロッとした様子で表情を一変させた成樹に、きょとんとした様子の彼女。
暫く間を置いて、彼の策略だったのか、と納得する。
同時に、彼らしいなと言う考えが浮かんで、思わず苦笑が零れた。
「ったく…。CDとMDの徒労のお礼に、腕を揮わせていただきますよ」
「楽しみにしとくわ」
「買出しに付き合ってもらうけどな。今日は調味料をたっぷり買う予定だから」
「…荷物持ちか…しゃーないな」
佐藤 成樹 / Soccer Life