035.失敗
「…どうしたの、それ」
前を歩くコウを呼び止めたナミは、ぱちくりと目を見開いた。
そんな彼女に、コウは叱られた子供のように肩を落とす。
「寝ぼけてる時にこっちに戻ったら…失敗した」
そう言った彼女の尻には、艶やかな毛並みに覆われた尻尾が揺れていた。
「失敗?」
落ち込んでいるらしいコウの隣に座ったルフィがそう鸚鵡返しに繰り返す。
「あー…久しぶりだな」
「…うん。最近は慣れたと思ってたんだけど…駄目みたい」
「ま、寝ぼけたなら仕方ねーだろ。気にすんな!」
そう言って、ルフィがコウの頭を撫でる。
ついでにその流れで尾を撫でられ、ビクリと肩を震わせた。
その様子を見たナミが、とあることを思い出す。
「その尻尾って本物?」
「?当然よ」
「なら、神経が通ってるのよね?」
そう確認されると、第六感がピクリと反応する。
危険、と判断する前に、隣に移動してきたナミがガシッと尻尾を掴んだ。
「に゛ゃーっ!!!」
何事だ!?と駆け込んできた麦わら一味。
声の主であるコウの姿が見えず、一行は首を傾げた。
ややあって、ルフィの後ろから彼女が顔を覗かせる。
「猫の時より太くて気持ちいい尻尾ね」
逃げられてしまったナミは、手の平に残る感触にそう微笑んだ。
この笑顔は、二度目がある笑顔だ。
そう判断したコウが警戒心を露にナミを睨む。
軽く涙目になっているように見えるのは気のせいではないだろう。
「ったく…敵襲かと思うだろうが」
一番にゾロが去っていく。
次に、ドアの所から一歩も入らずに様子を窺っていただけのウソップが踵を返した。
いや、返そうとして、サンジを見た。
時を同じくして、チョッパーも彼を見る。
「ウソップ!サンジが大変だ!頭から湯気が出てる!」
「あー…そっとしておいてやれ。人間の姿に尻尾は、ちょっと刺激が強すぎたらしい」
「???」
本来動物であるチョッパーには、理解できない部分らしい。
麦わら一味 / Black Cat