031.鳥籠の中に
指先一つで奪うことの出来る人の命とは、何て儚いものなんだろうか。
自分も、同じ人でありながら…まるで違うもののように感じてしまう時がある。
長に告げられるままに任務を重ね、一人前と呼ばれるまであと少し。
この手でどれほどの命を奪ってきたかわからない。
一人前の忍になったとして…今更、この血に塗れた手で何をしろと言うのだろう。
「死に急ぐなよ、氷景」
いつだったか、同郷の忍である佐助が、そう言った。
そんな彼に、こう返したのを覚えている。
「生きる意味を見つけたら、急ぐのをやめるさ」
「見つからなかったら?」
「…その時は、この鳥籠の中で朽ちるだけ…だな」
真夜中の月の下で交わした言葉を忘れることはない。
何かを言いたそうな佐助の顔が、氷景の脳裏に焼き付いている。
「じゃあ、俺は…お前がその『意味』を見つけることを祈るだけだな。
同胞が死ぬのは、失敗した連中だけで十分だ」
生きることが出来るのに死に向かって歩くなど、愚か以外の何者でもない。
しかし、自分には氷景を止めることは出来ないと。
佐助は、それを正しく理解していた。
「…お前に祈ってもらわなくとも、見つかるさ」
何の確証もないけれど、不思議と断言できる。
氷景は、佐助に向かってシニカルに笑って見せた。
雲ひとつない空を見上げる。
自由に羽ばたく翼を待つ、鳥のように。
霞桜 氷景 / 廻れ、