025.ナミダ
「初めまして、だな!俺はルフィ!」
「………コウ」
「コウって言うのか!」
元気に差し出された手を、大きな目で見つめるコウ。
自分よりも小さな少女は、ルフィにとって『守らなければならないもの』だった。
じっと手を見つめたまま動こうとしない彼女に首を傾げる。
そして、堪えきれず彼女の手を取ってギュッと握手をした。
「初めましての時に手を出されたらこうやって握るんだぞ!」
まるで兄にでもなったかのように、ルフィは笑顔でコウにそう教える。
いつもは大人たちから教えられるばかりである自分が誰かの世話を出来るということが嬉しかったのだろう。
しかし―――大きな目からぽろりと零れ落ちた大粒の涙に、彼の思考回路は停止した。
「な…何で泣くんだ!?」
おろおろと慌てる様は、いつもの彼を知る大人からすれば実に微笑ましいものだっただろう。
しかしながら、彼自身は必死だった。
「―――、?」
涙の中に掠れた声が聞こえ、ルフィは耳を澄ませる。
「な、何て言ったんだ?」
「―――…いの?」
「…ごめん!もう一回!」
「さわっても、いいの?」
「???」
細々と告げられた言葉に、ルフィは首を傾げた。
「駄目なのか?」
まるでわからない、といった様子のルフィ。
純粋な問いかけは、コウの凍てついた心を溶かしてくれた。
―――彼に触れても怒られない。
小さな、けれど、コウにとっては大きな勇気が、彼女に行動を起させた。
震える指先が、控えめに彼の指に触れる。
「…怒らない?」
「当たり前だろ!」
そう言って、彼はコウの手をギュッと握り締める。
突然の体温に驚いたけれど、新たな涙は零れなかった。
肌にしみこんでくる体温に慣れ始めた頃、コウは涙を溜めたままの顔に笑顔を浮かべた。
初めての笑顔を見たルフィの中で、達成感が膨らむ。
「よろしくな、コウ!」
「…よろしく、ルフィ」
これが、小さな少年と小さな少女の出会い。
ルフィ / Black Cat