019.君の声を探そう。

いくら流川が上手かろうと、たった一人では相手のチームと戦う事は出来ない。
キャプテンである彼がレギュラー以外のチームに入るのは当然だ。
しかし…レギュラーを取れないだけあって、プレーに積極性が見えない。
負けず嫌いである流川も、3枚のディフェンスがつけば動きにくい。
かと言って、回したパスがゴールまで運ばれるか―――
いや、途中で止められるに決まっている。

「…チッ」

危なげないドリブルをしたまま、流川は舌を打った。
この状況を打開するにはどうすればいいか。
バスケットの際のみに発揮される脳内の動きは、酷く忙しない。

「あー、もう!そこまで追い詰めてて何で取れないの!頑張れ、レギュラー!!」
「む…」

声が聞こえた。
応援の声など、いつもなら耳を素通りしていくと言うのに。
はっきりと聞こえた、彼女の声。

「流川一人くらい止めなさいよ!そっちは全員レギュラーなのよ!?」

活を入れるように声を上げるマネージャー。
その声に後押しされるように、ディフェンスが流川との距離をつめた。
しかし―――その声に影響を受けたのは、レギュラー陣だけではない。

「あ」

文字通り、あっという間だった。
ドリブル一つでディフェンスの間を潜り抜けた流川が、ゴール下に入り込む。
ふわりと飛んだにも関わらず、シュートは鋭い。
ガツン、とゴールに押し込まれたボールが床を跳ねた。

結局こうなるか、とスコアを見下ろしてから、視線を彼らの方へと向ける。
丁度、こちらを見ていた流川と視線が絡んだ。
どうだ、と言わんばかりの眼差し。

「流川くらい、って言ったのが気に入らなかったのかしら」

試合に戻っていく彼を見つめ、そう呟く。
練習中に応援の声を上げることの少ない彼女が、相手のレギュラーを応援した。
たとえ、それが活を入れるようなきついものだとしても、応援は応援だ。
流川が心中で密かな闘志を燃やしていたことなど、彼女は知る由もない。

その日、ある意味では絶好調だった流川の活躍により、レギュラーは完膚なきまでに敗北した。
勝ちと言うものの経験が乏しい流川のチーム側はそれに喜ぶ。
一番の功労者である流川自身が不機嫌だったと言うことは言うまでもないことだろう。

流川 楓 / 君と歩いた軌跡

Menu(お題順) Menu(ジャンル別)

08.10.14