016.足跡をたどって

新雪の上に、足跡が残っている。
雪の所為で匂いは残っていないけれど、その足跡はルフィのものだとわかった。
冬島に近いこの場所で草履を履いているのは彼くらいだから。
トン、と雪の上に下り立つと、黒猫の肉球を雪の冷たさが刺す。
痛いと感じるほどに冷たいそれに、思わず前足をプルプルと振った。
しかし、その足は難を逃れても、あとの3本が痛い。
右足、左足、と雪を払う動作を繰り返していた黒猫だが、4本を一周したところでそれを諦めた。
雪を蹴り、ひとつめの足跡の中に猫の足跡を残す。
青年の足跡の中に、ポツリと沈んだ猫の足跡。
振り向いてそれを確認した黒猫は、にゃあ、と鳴いた。
何が、とは言えないけれど、嬉しかった。
ひとつ、またひとつと、足跡の上書きを行っていく。
人間の歩幅に合わせるのは骨の折れる作業だった。
けれど、バランス感覚の良い猫には、決して不可能なことではない。
トン、トンと飛ぶように移動しながら、ひとつの足跡に、ひとつの足跡を重ねていく。
舳先の方へと続いていくそれを追って、黒猫が走っていった。

「…ルフィ」

メリーの上の雪を払っているルフィの背中に声をかける。
声に気付いた彼は、すぐに振り向いてくれた。

「おー。どうした?」
「寒くないの?」
「大丈夫だ!前の雪島の方が寒かったからな!」
「雪島じゃなくて、冬島ね」

立ち止まってしまうと、どうしても肉球の寒さが身にしみる。
軽く前足を振る黒猫に、ルフィが首を傾げた。
そして、ふとその原因を知る。
彼は迷いなく黒猫へと手を差し伸べた。

「肉球は辛ぇだろ!裸足と同じだからな!」

ひょいと自分のコートのフードへと運んでくれる彼。
上半身をフードから出して、彼の頬へと黒い毛並みを寄せる。
ありがとう、と紡げば、満面の笑みが返って来た。

「次は春島だね」
「そうだな。その次は夏島だ。いいなー…泳ぎてぇなー」
「駄目だよ。私たちは溺れるんだから」
「…夏島は暑いんだぞ」
「それは十分わかってます。ルフィよりも、毛皮を背負ってる私の方が暑いんだから」
「あ、そっか。………人間の姿に戻ればいいじゃねーか」
「…ま、そうだけどね」

払い終わったメリーの上に飛び乗るルフィ。
必然的にそこに移動することになった黒猫は、彼の肩越しに見える風景に目をやる。
舳先に居るからだろう。
自分が乗っている船の姿が消え、まるで海の上を飛んでいるようだと思う。
ここでしか見ることの出来ない、素晴らしい光景だ。

「…随分遠くまで来たね」
「ああ!でも、まだまだ進むぞ!」
「うん」
「仲間も増えてきたし、これからどんどん増えるからな!賑やかな船にするんだ」
「そうだね。これからもずっと、シャンクス達みたいに、賑やかで楽しい船だといいな」
「シャンクスの仲間はいい奴らだったなー。早く会いたいだろ?」
「ルフィも、でしょ?」

吐く息を白く濁らせつつ、何気ない会話を楽しむ。
重なり合った足跡の上に、新たな雪が積もりだしていた。

ルフィ / Black Cat

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08.11.25