015.知らないよ。

「そこの蛭魔妖一!」

突然聞こえた声の内容を理解したメンバーがギョッと目を見開く。
一体、どんな人間がこの無謀な台詞を吐いたのか。

「…………雪耶か」

不自然な沈黙は、名前を思い出していたからなのだろう。

「ね、他校のデータって持ってるよね」
「あるにはあるが…何に使う気だ?」
「使うんじゃなくて知りたいだけだから」

見せて、とまるでそれが当然のことのように頼む女子生徒。
対する蛭魔も、抵抗を感じるわけでもなく荷物からノートを取り出し、彼女へと投げた。
受け取ると同時に、1分、と言う声が聞こえる。

「巨深、巨深…」

蛭魔ではない人物の手によってまとめられているノートを捲っていく。
1分後、彼女はパタンとそれを閉じて蛭魔に返した。

「巨深に知り合いでも居んのか?」
「ん?知り合い…友達?そんな感じかな」

返すノートに新しいガムを添えた。
受け取った蛭魔がそれの封を切りつつ、ニヤリと口角を持ち上げる。

「丁度良い。何か情報よこせ」

銀色の紙を剥いたガムを歯で銜え、彼はそう言った。

「知らないよ」

名前以外は全然、と小さく微笑んだ。





「ちょ、誰ですか、あの子!!」
「ヒル魔先輩とフツーに喋ってるっスよ!?」
「あー…紅ちゃんね。独特の雰囲気で、ヒル魔とも普通に喋るんだ」
「うわー…恐いもの知らず…」
「こーら、セナ。雪耶さんって、分け隔てない性格で、友達も多いのよ」
「へ、へぇ…」
「それにしても、他校のデータなんて…どうしたのかしら」

当事者たちのあずかり知らぬところで、疑問は確実に増えていく。

泥門メンバー / トルコ桔梗

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08.08.13