012.君と僕と  ?

「またこんな所に居たのか」
「…蔵馬」
「探したんだ」
「ごめんなさい。少し…風に当たりたくて」
「構わないが、出て行くなら一声かけてくれ。
この辺りは俺たちの土地だが、迷い込む妖怪がないとは言えない」
「そうね」
「ついでに、もう少しあたたかくしろ」
「…あなたが寒いでしょう」
「外套も着ていない素肌を見ている方が寒い」
「ごめんなさいね。外套を着ると、風が遮られてしまうから」
「――――」
「蔵馬?」
「何かあったのか?」
「………いいえ。少し…考え事をしていただけ」
「俺には話せないことか?」
「……別の命を抱えているのだと思うと、不思議だと思って」
「……………」
「私ではない意思を持つ者が私の身体の中に居る。不思議な感覚だわ」
「最近はよく動くのか?」
「そうね。妖狐らしく、耳はいいみたい。…ほら。自分の話をしているということがわかるのね」
「……そうらしいな」
「明日にも離れてしまうのかと思うと、少しだけ寂しい気もするわ」
「そう思っている暇はないだろうな」
「それはそうだけど。いつだって傍に居たんだから、そう思うのも無理はないでしょう?」
「何を言っている?」
「?」
「これから、そいつは俺たちの傍で成長していくんだ。
常に触れているか、そうでないかの違いだろう」
「…そう、ね」
「今は話すことは出来ないが…これからは、己の意思を持って言葉を交わすようになる。
同じものを見て、同じものを感じるんだ」
「私たちと一緒に?」
「ああ。寂しいと思うか?」
「…いいえ。どちらかと言うと…楽しみね。
見せてあげたいもの、教えてあげたいことは沢山あるわ」
「わかったなら、さっさと帰るぞ」
「あら、本当。あなたの手があたたかく感じるなんて…重症だわ」
「その通りだ。まったく…」
「だから、ごめんなさいって」
「謝るならそいつに謝っておけ」
「…ここの景色は綺麗だから、一緒に見に来ましょうね」
「………違うだろう」

妖狐蔵馬 / 悠久に馳せる想い

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08.10.29