004.信じ合えるならば
「爆破装置を設置しろ」
この書類を届けろ、とでも言うかのように、あっさりとそう命じたセフィロス。
それを聞いた兵は、戸惑うように「しかし」と声を上げた。
「コウさんがまだ中に…」
戸惑いがその場に居た兵たちの間を伝染していく。
モンスターにより、殆ど機能しなくなった魔晄炉。
その内部に巣食うモンスターの殲滅が今回の任務だ。
侵食が酷かった場合には、魔晄炉ごと破壊しても良いという許可もある。
先ほど、先遣隊として一人で中に進んだコウからの無線で、中は駄目だと言う事が判明。
最早、この魔晄炉が本来の機能を果たすのは不可能―――つまり、破壊だ。
「先ほどの無線で3分後に爆破しろと言ってきた。さっさと準備を済ませろ」
後ろで破壊音が聞こえていたのは、きっと戦闘中だったからなのだろう。
量が多く、対処が面倒になった為に大して確認もせずに連絡してきた可能性も考えられる。
しかし、中を見に行った彼女が破壊すべきと判断した―――その結果だけで、動くには十分。
「…3分では、とても中からは…」
不安げに入り口とセフィロスを交互に見つめる彼らに、セフィロスはフン、と鼻で笑った。
「正確には、あと2分だ」
「セフィロスさん!?」
「コウは自分の実力をよく理解している」
自らの命を危険に晒すような判断は、絶対にしない。
信じているからではなく…そう、知っているのだ。
「――――設置、開始します」
一点の曇りもなく、はっきりと告げるセフィロスに、兵がそう返した。
部隊長の指示により、その下にいる者たちが一斉に行動を開始する。
「―――爆破まで10秒。9、8…」
未だ姿を見せないコウに、兵たちの間には緊張が走る。
スイッチを握る手が汗で滑りそうだというのに、隣に立つ男は至って平然としている。
「5、4、3…」
3秒のカウントと同時に、入り口から走り出てくる人影。
それを追うように、胴の長いモンスターが入り口を破壊して飛び出してきた。
驚くほどの速度で走ってくるその人は、ある程度魔晄炉から離れたところでくるりと反転した。
「点火!」
ゼロのカウントの代わりに、指示が上がる。
スイッチを持った兵士が一斉にそれを押す。
コウが構えた銃口が火を吹いたのと、装置が爆発するのはほぼ同時だった。
「お前にしては梃子摺ったな」
「そうかしら?あのモンスター、あれで10体目だったのよ。この時間を褒めて欲しいくらいだわ」
ゆっくりと歩いてきた彼女に、セフィロスが静かな言葉をかける。
彼女はにこりと微笑んでそう答えた。
「そうか。…よくやった」
「褒めるなら表情作りから始めなさいよ」
互いに軽口を叩き合う二人に、不安など微塵もなかったのだろう。
いつもの冷静すぎるセフィロスの顔に、表情が見えた。
彼女だけが彼を人間に戻す―――任務を共にした彼らは、その絆の深さを目の当たりにした。
セフィロス / Azure memory