新しい年の迎え方

「ねぇ、ディーノくん。大晦日なんですけれど、キッチンを使ってもいいですか?」

控えめにそう頼んでくるコウに、ディーノはどうかな、と首を傾げる。

「別に構わねぇと思うが…どうしたんだ?」
「今年は、お節を作ろうと思って」
「お節?」
「日本風の年越しです!」

声高らかにそう宣言したコウ。
楽しみにしているのがその表情からにじみ出ていて、ディーノも自然と笑顔になる。

「じゃあ、そのように準備しねぇとな。詳しいのか?」
「隼人くんと、ビアンキちゃんに聞いておきましたから、大丈夫です」

そう答えた彼女に、そう言えばこのところよく連絡を取っていたな、と思い出す。
全てはこのためだったのだろう。

「お節ってのは日本食か?足りない食材があるなら、早めにコックに伝えてやってくれよ」
「はい、ありがとうございます」
「楽しみにしてる」

そう告げると、コウは嬉しそうに笑って「頑張ります」と拳を握った。












年明け二日目の朝、沢田家のインターホンが鳴った。

「はい」
「あけましておめでとうございます」
「よ、ツナ!おめでとうさん!」

玄関先には、ディーノとコウの姿があった。

「ディーノさん、コウさん!おめでとうございます。…久しぶりですね」

数か月ぶりの訪問に、ツナの表情も明るくなる。
上がってください、と玄関を開いて招いた。

「あ、綱吉くん」

思い出したように、コウがツナを呼ぶ。
振り向いた彼に、持っていた包みを差し出した。

「失礼かなとは思ったんですけれど…よろしければ、皆さんでどうぞ」
「ありがとうございます!えっと…?」
「お節なんです。二日目からこっちに来るのに、作りすぎてしまって…」
「コウさんが作ったんですか!?」

って言うか、イタリアってお節作るの!?と言う脳内の声が聞こえそうだ。
そんなツナの反応に、ディーノが笑う。

「今年は日本風の年越しにしようって事になってな!コウが張り切ったんだ。
コウは料理が上手いから、期待していいぞ!」

前に、獄寺が二人を倦怠期知らずの万年新婚夫婦と言い表していたが、まさにそうだと納得する。
迷いも躊躇いもなく褒めるディーノと、嬉しそうに頬を染めるコウ。
見ているこちらまで幸せになりそうな夫婦だが―――熱にあてられる事もしばしば。

「コウ!」
「あ、ビアンキちゃん。あけましておめでとうございます」
「おめでとう。お節は持ってきてくれた?」

挨拶も早々にそれを尋ねるビアンキ。
見た目で言うならば姉と妹が逆転してしまう事も多い二人だが、この時ばかりは彼女が妹に見えた。

「ええ。沢山持ってきましたから、頑張って食べてくださいね」
「もちろんよ!嬉しいわ」

ニコニコ笑顔の姉妹を横目に、ディーノがツナに近付く。
彼が持っていた包みもまた、お節らしい。

「悪いな、コウの希望で、量が多くなっちまった」
「いえ、大丈夫です。あの様子だと、ビアンキがかなり喜んで食べてくれそうですし…」

居候が多いので、と答えれば、ディーノは、そうだな、と笑う。

「ビアンキちゃんもお節を手伝ったんですか?」
「ええ、もちろんよ。でも、失敗してしまったから、コウには食べてもらえないわ」

あっさりとこう答えたビアンキに、あれ?と首を傾げる。
もしかして―――その疑問を解消するように、ツナはディーノを見る。

「ビアンキは、コウにはポイズンクッキングを食べさせないからな」
「…毒だって自覚、あったんだ…」

いくらビアンキでも、大事な姉にポイズンクッキングは食べさせられないようだ。

「あ、こっちの包みは、隼人用なんだ」
「そうなんですか。今日、昼頃に来るって言ってたから、丁度いいですね」
「そっか。なら、コウが直接渡した方が良いな」

そう頷くと、ディーノがコウを呼ぶ。
二つ返事で彼の元へとやってきた彼女に、事情を説明して包みを渡した。

「獄寺くんの分もあるんですね―――って、当然か」

ビアンキに作るなら、獄寺にも当然用意する、それが彼女だ。
言いながら納得したツナに、紅は、はい、と笑った。






「おめでとうございます」
「久しぶりだな、隼人。おめでとう」
「…おめでとうございます」
「隼人くん、そんな顔しない。お節、あげませんよ?」
「…悪かった」
「(獄寺くんが素直…!)」
「ところで、三人ともお年玉は欲しいですか?」
「え?」
「私は貰うわ。ありがとう」
「………貰っとく。さんきゅ」
「綱吉くんはどうします?」
「えっと…いい、んですか?」
「おう!今年は日本風だからな。ガキたちにも持ってきてるから、遠慮しなくていいぜ」
「じゃあ…ありがとうございます」
「リボーンさんも要ります?」
「…コウ」
「冗談ですよ」

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あけましておめでとうございます。
いつも『Hora fugit』へのご来訪ありがとうございます。

皆様とのお付き合いが始まり、何年になるのでしょうか。
長い付き合いの方もいれば、短い付き合いの方もいるのでしょうね。
そんな、一期一会を大切にしたいと思います。
今年もサイト共々よろしくお願いいたします。

2012年が皆様にとって良い年でありますように。

Hora fugit 雪耶 紅

12.01.01