それぞれの新年  白ひげ海賊団ver.

「よし、行くぞ!」

近付くなり、パッと手を取られた。
そのまま走り出すエースに、足がもつれそうになったけれど、そこは猫。
上手く体勢を整え、走る彼に合わせて駆け出す。

「どこに行くの?」
「適当に回ろうぜ」
「了解!」

そんな会話と共に、港から走り去る二人。
仲間たちは、二人をあたたかい眼差しで見送った。

「おーおー、相変わらず熱いこった」
「いいんじゃねぇか?アイツららしいぜ」
「しかしよー…コウはいいとして、エースは船番じゃなかったか?」
「…エース!!戻って来いー!!!」

もちろん、仲間の声など届くはずもなく。












二人は近くの町にやってきていた。
賑わう町中では、大通りに所狭しと屋台が並んでいる。

「何の祭りかな?」
「さぁなー。おっちゃん、それ二つ!」

目に付いた焼き菓子系の屋台で店主に声をかける。
熱いから気をつけな、と渡されたそれに、コウの目が輝いた。

「魚?」
「何だい、嬢ちゃんは初めてか?」
「うん!」
「じゃあ、もう一つずつ持って行きな!美味いからよーく味わって食べろよ」

気前の良い店主から、紙袋で追加を受け取る。
その時のコウの笑顔が一番のお代になっただろう。
魚の型で焼いているらしいそれを頬張りながら、二人は大通りを進んだ。

「新年のお祝いなんだって」
「ふぅん…俺らの新年会みたいなもんだな」
「そうだね。これ、すごく美味しい。皆にも買って帰ろ?」
「確かに美味いけど、全員分となると厳しくないか?」

一つでもそれなりに嵩張る菓子を人数分。
流石に二人では手も金も足りないと、仕方なく購入を諦める。
一人二つずつ、きっちり食べ終わったところで、エースが「お?」と何かに反応した。

「見ろよ、コウ。帽子屋まで店を出してるぜ」
「あ、これエースのと似てる」

店先のそれをひょいとかぶってみる。
多少、飾りなど違う部分はあるけれど、形はよく似た帽子だった。

「お、兄ちゃんと揃いだな」

店の男性が新たな客に笑顔で声をかけてきた。
鏡をコウに手渡す男性。
彼女はそれを受け取り、自分の姿を映し―――

「あ」
「どうした?」

思わず声を漏らすコウに、すかさずエースからの問いかけ。
彼女は答える前に鏡の位置を変えた。
これで、エースからも同じものが見えるはずだ。

「やべぇな」

エースが首だけで振り向く。
その間に、コウはかぶっていた帽子を名残惜しそうに外した。
要らないのか?と問う店主に苦笑を返す。

「時間がないみたい」
「いたぞ!!火拳のエースだ!!黒爪のコウも一緒にいる!!」

それなりに名の通った海賊の名前が聞こえたとあれば、その場は騒然となる。
巻き込まれては大変と人波が右へ左へと混乱を極めた。
そんな中を紛れるようにして、走り出すエースとコウ。

「ったく…誰だよ、海軍に知らせたのは!今日くらいはゆっくりさせろってんだ」
「ほんと。今日は楽しんでただけなのに」

残念、と肩を竦めつつ、エースと同じ速度で走る。

「…下を走ると町の連中の迷惑になるな」

ぽつりと零したエースが、コウ、と彼女を呼ぶ。
何と説明せずとも理解した彼女は、猫の姿になってエースの肩に飛んだ。
すると、彼はコウを支えて高く飛び、とある店の屋上へと着地。
上から見渡せば、大通りの向こうからも海兵が走ってきているのが見えた。
気付かなければ、挟み撃ちにされていた所だ。

「運が良かったね」
「まったくだな」
「お餅って食べてみたかったのになぁ」
「奴らを撒いたらまた来るか」

呑気な会話は、下の海兵が銃を構えたところで終了。
エースだけであれば何の問題もないけれど、今はコウが一緒だ。
銃弾程度どうとでも出来るけれど、万が一、があってはいけない。
黒猫のままの彼女を襟巻のように肩に乗せ、屋上を走り出した。



「おじさーん!たい焼き二つ!」
「あいよ!って嬢ちゃん、無事だったのかい」
「うん。あれくらい平気平気」
「つーか、二人とも賞金首だったんだなぁ…この島はそう言う情報に疎くてな。ほらよ」
「ありがと!」

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あけましておめでとうございます。
いつも『Hora fugit』へのご来訪ありがとうございます。
申込みの際のコメントから、もう何年と言うお付き合いの方もいらっしゃるようです。
顔も知らないお付き合いではありますが、こうして共有できる―――ネット世界の素晴らしい所だなと思います。
今年もサイト共々よろしくお願いいたします。

2011年が皆様にとって良い年でありますように。

Hora fugit 雪耶 紅

11.01.01