君のため
60万Hit感謝企画

仕掛けと言うのは驚かせてこそ意味がある。




「よっす、暁斗!」
「おはようさん」
「今日も朝練か~?お互い頑張ろうぜ」

朝練の為に早く登校したクラスメイトからの声に、暁斗は明るく声を返した。
そのまま鞄を背中へと回し、足取り軽くグラウンドを横切る。
部室の前にはすでに部員の何名かが集っていた。

「相変わらず早いなぁ」

そんな呑気な声に気づいた部員からの朝の挨拶が殺到する。
それらに手を上げるくらいの軽い返事を返し、すでに砂のついたTシャツを着た風祭の隣に並ぶ。
一際疲れている…ように見えるのだが彼自身はそうではないだろう。
そのイキイキした表情からそれが伺える。

「おはよ!暁斗くん」
「カザはもうすでに朝練後って感じだなぁ」
「そうかな?あ、シゲさん!!」

照れるように笑う風祭は暁斗の背後を見てそう声を上げた。
暁斗も同じく振り向くと、金髪の彼が眠そうに欠伸をしながらこっちに歩いて来ている。

「おはようさん、ポチ」
「お早うございます!」

成樹はヒラヒラと手を振って答える。
それを見届け、風祭はまた練習へと戻っていった。

「おはよ」
「…おはよーさん」
「…随分眠そうだな。昨日寝てないのか?」
「あー……ちょっとな」

それだけを言うと成樹はいそいそと部室に入っていく。
いつもとは違った素気ない態度に首を傾げる暁斗。

「…ま、別にいいか」

特に気にした様子もなく、暁斗もまた練習に加わった。












「シゲさん、今日余所余所しいね」

昼食の時間に風祭がそんな事を漏らした。
その声を受け取った人物…暁斗はきょとんと目を開く。

「…そーか?」
「え!?暁斗くん思わないの?」
「あぁ。あんまり気にしてなかったなぁ。そんな日もあるかなぁと」

そんな暁斗の返事に、周囲が脱力した。

「気に…ならないのか?」

水野の躊躇いがちな言葉。

「別に?気紛れはアイツの専売特許だろ」

そう言ってストローからジュースを啜る。
毎日同じ行動をするような奴じゃないからこそ、一緒に居て飽きないんだ。
それを暁斗はわかっている。

「ま、女でも出来たんじゃねぇの?」
「それは違う」

冗談交じりに言った暁斗に、間髪いれずに答えたのは水野。
だが、否定してしまってから「しまった」と言う風に顔を逸らした。

「…ふーん…たつぼんは知ってるんだな」

ニヤリ、と口角を持ち上げる暁斗。
やはり彼を誤魔化すのは無理のようだ。
本人から硬く口止めされているだけに、水野はどうしたのもかと思慮を巡らせる。
傍から見ればさほど変化は見られないのだが、内心は酷く焦っていた。
だが、ここで忘れてはならないのは相手が暁斗だという事だろう。

「たつぼんー?そんなに悩む必要ないぜ?聞かないから」
「は…?」
「や、聞かれてもいい事なら話すだろ?」

だから聞かねぇよ。と暁斗は笑う。
そして、呆気に取られる水野が何か言う前にその場を立った。

「お先」

バタンと閉じられた屋上の扉。

「…暁斗くんって相変わらずマイペースだよね」
「……そうだな」












「暁斗!」

屋上からの階段を降りて来ていた暁斗を呼ぶ声。
そう言えば今日初めて呼ばれたな、などと考え、暁斗は答えた。

「おぅ。どーした?」
「今から寺に来ん?」
「……それは思いっきり午後の授業をサボるのを前提としてるんだよな?」

暁斗の言葉に成樹は笑う。
肯定の笑みだった。

「俺次の授業出ないと単位やばいんだよなー…」
「単位って…義務教育なんやから単位関係あらへんやろ」
「それもそうだな。学力は十分だし……お付き合いしましょうか」

タンッと五段上から飛び降りると、暁斗は成樹の隣に並ぶ。
成樹は暁斗の返事などわかりきっていたらしく、暁斗の鞄まで持って来ていた。
それを受け取りながら暁斗は片方の口の端を持ち上げる。

「…用意のいい事で」
「おおきに」

ニカッと笑って歩き出す成樹と共に、暁斗も歩き出した。












「これとこれとこれと…あぁ、あれもやな」
「…何だよ?これ」

どんどん腕の上に積載していくそれらを見下ろし、暁斗は成樹に向かって問う。
最後にバンダナと思しき布を一番上に載せると、彼はにっこりと微笑んだ。

「10分で着替えてや」

そう言うと、彼は部屋の襖を閉じる。
よくわからないままに新品のサッカーウェアと共に残された暁斗。
溜め息をつきながらも言われたとおりにそれらに着替える事にした。
数分後、部屋の外にいた成樹に声を掛ける。

「おぉ、さすが俺。ピッタリやな」
「どーも。んで?そろそろ教えて欲しいんだけど」
「今からフットサル行くで~。あ、学校の荷物はここに置いといてええから。部活用のだけ持って」
「…聞けよ」

大通りで捕まえたタクシーに運ばれ、彼らは程なくしてフットサルに到着する。











「………なるほど。お前が仕組んだわけだ」

相手チームの面子を見て、暁斗は漸く彼の思惑を悟ったらしい。
暁斗の言葉に成樹は笑って頷く。

「ここら辺で一番強い大人のチームや。楽しめるやろ?」
「…当然だな」

暁斗も笑う。
その時、思い出したように成樹が「あ」と声を上げた。

「暁斗、誕生日おめでとうさん」
「…俺の誕生日一週間後だけど…?」
「人と同じ日に祝っても面白うないやん」
「…お前らしいな」


「おーい!!成樹ー!!暁斗ー!!始めるぞー!!」

二人を呼ぶ声に元気な返事を返し、彼らは駆け出した。



「しっかし…どうやってアポ取ったわけ?あの人たち社会人だからかなり忙しかったと思うけど…」
「昨日の夜遅くまで掛け合ってもらってん。おかげで寝不足やわー…」
「…さんきゅ」
「どういたしまして。暁斗にはプレゼントよりもこっちの方がよかったやろ?」
「もちろん」
「あ、そのサッカーウェアもプレゼントやから。返さんといてな」
「…いいのか?」
「人の好意は素直に受け取るもんやで~」
「…だな」




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05.08.26