一年にたった一度の
エドver.

「なぁ、今年はどうするんだ?」
「んー?」

ベッドで横になりながらページを捲るコウに、風呂上りのエドが声をかけた。
いつもは綺麗に三つ編みになっている髪が、全て下ろされている。
本から一時的に視線を外すと、コウはエドの方を向いた。

「何が?」
「お前の誕生日だって。毎年リゼンブールに帰ってただろ?」
「あぁ、そう言う事」
「今年も帰るか?」
「んー…エド達次第かな。旅を続けたいって言うなら別にいいよ」

本に栞を挟みこむと、コウはベッドに座りなおして聞く態勢を整える。
そこで、ふともう一人の幼馴染の存在を思い出した。
キョロキョロと視線を彷徨わせるコウに、エドが「どうした?」と尋ねる。

「アルは?」
「あぁ、アイツなら裏口に捨てられたネコの所にエサやりに行ってんだろ」
「裏口にネコ?」
「自分が食わねぇ分の夕食を持ち帰ってたからな。間違いなし」
「アルらしいね。ネコくらい許してあげればいいのに」

クスクスと笑いながらエドにそう告げる。
エドは髪を拭きながらブンブンと首を振った。

「駄目だ駄目だ駄目だ!旅にネコを二匹も連れて行けねぇだろうが」
「ルシアの事は私が面倒見るし」
「でも駄目!ルシアみたいな頑丈な作りのネコばっかりじゃねぇんだよ!」
「……それはルシアに失礼」

コウの足元でルシアが顔を擡げる。
どうやら自分の悪口言われたと言う事はわかっているらしい。

「っと。そんなことよりお前の誕生日の話!帰るなら明日にはリゼンブールに向かわないとな」
「旅はいいの?」
「あのなー…一年に一回しかないんだぞ?こんな時くらいはわがまま言ってみろよ」

呆れたように溜め息をつきながらの言葉。
それでも、どこか優しさを感じずに居られないのはエドだからだろう。
彼が本心からそれを思っているからこそ。

「じゃあ…帰りたいです」
「うっし!わかった。んじゃ、明日の昼には汽車に乗ろう」

ニカッと笑ってそう答えたエドに、コウも笑顔を浮かべた。
丁度その時、アルが部屋へと戻ってくる。

「あれ?どうしたの?」
「明日の昼にリゼンブールに向かおうぜ」
「明日…あぁ、コウの誕生日?」
「ごめんね、旅の途中なのに」
「謝る事なんかないよ!当然でしょ?」

迷いもなくそう言ってくれるアル。

「ありがとう!」





「兄さん、午前中は時間あるんだよね?」
「ああ」
「なら、コウのプレゼント買いに行こうよ!」
「…だな」

05.04.02