一年にたった一度の
エンヴィーver.

「コウ!」
「きゃあっ!!エ、エンヴィーッ!!急に飛びつかないでって何度言えばわかるの!?」

赤くなった頬を隠すようにしてエンヴィーに向かって声を上げる。
彼からすれば、コウの行動が照れ隠しなのはすぐにわかるのだが。

「赤くなっちゃって。可愛い~!」

後ろから抱き込むようにして髪に顔を埋めるエンヴィー。
初めはその腕を逃れようとジタバタと無駄な足掻きと言う奴を試みていたのだが…早々に諦めた。

「あれ?もう終わり?」
「エンヴィーには何やっても無駄だもん」
「よくわかってるねー。イイ子イイ子」
「……馬鹿にしてるの?」
「可愛がってるの」
「ラスト―――!!エンヴィーがいじめるっ!!!」

無理やりにエンヴィーの腕を抜けると、丁度部屋の前を通りがかったラストの元へと一目散に駆けて行く。
ラストの背に隠れるようにしてエンヴィーを睨みつけるコウ。
はっきり言って、全く恐くない。
自分の背に隠れているらしいコウとエンヴィーを交互に見やるラスト。
そして軽く溜め息をつくと、エンヴィーに向かって言った。

「エンヴィー…あなた何のためにここに来たんだったか覚えてないの?」
「…あぁ、そうだったね。目的を忘れてたよ」
「コウをからかうのもいい加減にしておきなさいよ。ほら、コウも隠れてないで行きなさい」

コウの背中を押して部屋の中へと戻すと、ラストは二人を見つめた後部屋を去って行った。
若干不貞腐れた様子のコウは、口を尖らせてエンヴィーを見る。

「からかう以外に目的があったんだ?」
「あー…まぁね」

エンヴィーにしては珍しく、歯切れの悪い返事。
それを聞いてコウは首を傾げた。
コウが聞く態勢に入ったことから、エンヴィーは髪を掻き揚げてそれを告げ始める。

「あのさ…明日、コウの誕生日でしょ?」
「誕生日……?あ、そうだっけ?」

何とも頼りない返事に、エンヴィーが肩を落とす。
気を取り直して続けた。

「だからさ、買い物行かない?」
「いつも無理にでも連れて行くくせに…」
「だーかーら!誕生日に無理やり連れて行っても仕方ないでしょ!」

ボスンッとベッドに腰を降ろしてそう言うエンヴィー。
コウと目が合うと、すぐさま視線を外した。
その様子は照れているようにも見えて…

「お誘い?」
「……他に何があるのさ」
「行くっ!!」

笑顔満開でそう答えると、コウはベッドに座るエンヴィーに飛びついた。

「うわっと。危ないなぁ…」

突然の行動に驚きながらも、エンヴィーはしっかりとコウを受け止める。
猫のように擦り寄るコウに苦笑を浮かべながら、飽きる事なくその髪を撫でる。

「ね、どこ行くの?」
「コウの好きな所。どこでもいいよ」
「ありがと!じゃあねー…」

コウの嬉しそうな声がドアの隙間から漏れ出す。
先ほど部屋を去ったように見せかけて廊下で聞いていたラストが笑みを浮かべた。

「まったく…人騒がせな二人だわ」

そう言いながらも優しい笑みを浮かべて、今度こそ部屋を離れて廊下の先へと消えていった。

05.04.02