一人、二人、三人
「それにしても…エース、良かったな!!」
再会を果たしたルフィが、唐突にそう言った。
一体何が良かったのか、疑問を浮かべたのは本人ではなくコウ。
「何の話?」
「コウはエースと一緒に旅するんだろ?なら、エースはすっげー嬉しいはずだ!!」
断言するルフィ。
きょとんと首を傾げる彼女の隣で、言葉の意味を理解したエースがハッと我に変える。
「バッ…お前…何言う気だ、ルフィ!!」
慌ててルフィを黙らせようとするも、そんな事で黙るような彼ではない。
兄弟喧嘩に発展しそうになったところで、当然のようにコウが間に入った。
「はいはい、喧嘩しない!!」
ザリッと両手でそれぞれの頬を引っ掻く。
自然系であるエースに物理攻撃は効かないけれど、そこは事情があっての事。
二人の頬にくっきりと綺麗に刻まれた三本傷に、コウがケラケラと笑う。
「シャンクスとお揃いね!」
「お揃いね、じゃねー!!痛ってぇ!!」
「何でエースに効くんだよ!?っつーか痛ぇっ!!」
「んー…細かい事は気にしない!」
笑って誤魔化した彼女は、二人の間にちょこんと腰を下ろす。
そして、左右を見てからふふっと笑った。
「懐かしいね、こうして三人で話をするの」
「そうだな!昔に戻ったみたいだ!」
頬の傷は気にしない事にしたのか、ルフィがそう笑う。
流石、海賊王を目指す男は懐の広さが違う。
細かい事を気にしない大雑把な性格とも言えるけれど。
「そう言えば昔、海に出るって言ってエースに猛反対されたっけ」
懐かしいなぁ、なんて微笑むコウの隣で、居心地悪そうに髪を掻くエース。
そんな事もあったな!と笑うルフィと、彼と頷き合うコウ。
覚えて欲しくない事までちゃんと覚えている二人の記憶力を恨んだ。
「ルフィとエースがそれぞれ海に出るなら…私も出ようかなぁ」
「お、コウも海賊だな!」
「いつか、偉大なる航路で出会うかもしれないね」
そうだなー、なんて二人で顔を見合わせて笑うルフィとコウ。
そんな二人に待ったをかけたのは、他でもないエースだ。
「お前!一人で海に出るつもりか!?」
びしっとコウを指差して怒鳴るように質問する彼。
意味がわからないと言った表情で首を傾げたコウは、うん、と頷く。
「島で一人なんて寂しい。私も海に出るよ!」
「だ、駄目だ!!」
「!どうして!?」
驚いたように食って掛かるコウ。
冷静に話し合うことが難しい子供同士だ。
片方が熱くなれば、自然ともう片方にも火がついてしまう。
「一人なんて危ないだろうが!!」
「ルフィだって同じじゃない!!」
「ルフィとコウは違う!!」
「どこが違うの!?」
「お前は女だ!!」
一際大きく叫んだエースに、コウがピタリと口を閉じる。
その目には大粒の涙が浮かんでいた。
「エース!コウを泣かせるなよ!」
「うるせぇ!」
「って感じだったよね」
「ちょっと待て。そこで終わりじゃないだろ!?」
思わず口を挟むエース。
前にもこんな事がなかったか?デジャヴを感じた。
「んー…何があったっけ」
「肝心なところを忘れるなよ…!」
がっくりと肩を落とすエースの隣で、コウは必死に記憶を探っていた。
本当に、覚えていないらしい。
「俺は覚えてるぞ!エースが―――」
「だー!言うな!」
「何だよ!コウに思い出して欲しいんじゃないのか?」
「こっちは微妙なんだよ!」
久々の再会でテンションが上がっているのか、いつもよりも三割り増しでにぎやかだな、などと考えるコウ。
彼女が思い出せば全てが解決だと言うのに、もはや彼女は思い出す努力すらやめてしまっている。
次に口を開く時にはルフィとコウの思い出話は別の内容へと移っていた。
「まさかこんな所でルフィに会えるとは。良かったね、エース!」
いつもと変わらずエースの肩に乗りながら、コウが嬉しそうにそう話しかけた。
「あぁ、そうだな。思わぬ収穫だった。会えてよかった」
「ルフィの仲間…個性的で、凄くいい人たちだった。良い仲間に恵まれたなぁ」
見送ってくれた彼らの事を思い出すと、自然と白ひげのメンバーを思い出してくる。
自分たちの仲間も皆個性的で、そしていい人たちだ。
「…会いたい、な」
「送ってやろうか?」
「ううん。そうしたら置いていくつもりでしょ?」
「………」
沈黙は肯定。
部下の後始末は隊長の役目だからと船を出たエースはコウを置いていくつもりだった。
その時の渾身の一撃は、今もわき腹に傷跡が残っている。
アレは、今までになく鋭い引っ掻き傷だった。
「“どこまでもどこへでも連れてってやる”って言ったの、エースなのにね」
「!?お前、覚えてたのか!?」
「思い出したの」
さっきだけど、と呟いたコウに、エースは何も言わなかった。
しかし、耳元が赤く染まっているのを見て、照れているのだとすぐに気付く。
クスクス、と笑ったコウは、彼の頬に擦り寄った。
「どこまでも一緒、でしょ?」
「…あぁ、そうだったな」
そう、約束した。
危ない目にあわせたくないからと置いていくのは、エゴでしかない。
エースは肩に乗るコウを撫で、風から守るように手を添える。
「速度を上げるぞ」
「うん!」
ザザッと波音を立て、ストライカーが走る。
三人が一人になって、そして二人に。
再会して三人になって、二人と一人、またそれぞれの道を進みだす。
次にルフィと二人の道が交差するのは、どこになるのだろうか。
「コウ!」
「…何」
「お前は俺が連れて行ってやる!」
「…エースが?」
「どこまでも、どこへでも連れてってやるから…一人で海に出るなよ!!」
「ほんとに?」
「当たり前だ!お前は俺が守ってやるからな!」
「…うん!」
Request [ 六周年企画|くるみ様|三人で幼い頃の回想 ]
10.07.04