Black Cat
出会い  ウソップ編

「私、あんまり関わりたくない集団だなぁ…」

ウソップからの話を聞いていたコウが、そう呟いた。
そんな彼女の声に、一同の視線が彼女へと集まる。

「どうしたの、コウ。珍しいわね?」
「だってさ…“クロネコ”海賊団、でしょ?」

なんかねぇ、と溜め息を吐き出すコウ。
その時点でルフィ、ナミ、ゾロが、あぁ、と納得した。
わけがわからないのはウソップただ一人だ。

「な、何だよ!?戦ってくれるんじゃないのか!?」
「だってねぇ…クロネコと戦うのって気が引けるし」
「意味わかんねぇよ!!」

海賊が攻めて来るのだ。
味方は一人でも多い方が良いに決まっている。
こんな状況で気が引けるなどと言ってしまう彼女に、ウソップは愕然とした。

「あぁ…そっか。君は知らないもんね」
「何が―――」

そう言ったウソップの目の前で、コウが消えた。
言葉を失って瞬きをする彼の前には一匹の黒猫。
ニャ、と短く鳴いた猫に、ウソップが「…は?」と声を零す。

「コウはどこに行ったんだ!?」
「どこにって…居るだろうが、目の前に」
「…黒猫以外いねぇじゃねぇか!!」
「だから、黒猫がいるじゃない」
「…は?」
「この黒猫がコウだぞ」

ゾロ、ナミ、ルフィとウソップの疑問に答えていく。
核心の内容を告げたルフィに、彼の目は黒猫…いや、コウを凝視した。

「ニャーオ、なんてね」

表情などわからないはずの黒猫が、得意げに笑ったように見えた。








「ば、化け猫!!」
「失礼ね。化けてないわよ」

即座に反応したコウが人間へと姿を戻し、ウソップの頬を摘んで捻る。
少し強めに捻ったお蔭で彼の頬の一部だけが赤く染まった。

「痛ぇよ!爪が!!」
「あ、ごめん。しまうの忘れてたね」

明らかに棒読みの謝罪を紡げば、わざとらしい、と肩を怒らせる彼。
うん、中々イイ反応をしてくれるじゃないか。
コウは満足げに笑った。

「ま、今回はウソップに免じて…気が引けるけど、我慢するよ」
「…お前、強いのか?」

疑いの眼差しを受け、コウはにこりと微笑んだ。
そして、一瞬でウソップの前に移動して足を払い、倒れた彼の上にストンと腰を下ろす。

「悪いけど、君よりは強いよ」

腹の辺りにしっかりと座りながら、そう告げる彼女。
確かに今の動きを見ていれば、ウソップよりは強いという事は明らかだ。

「そ、そうか。…よくわかった」

ナミよりも小柄な体格で何が出来るのか―――そう思っていたのだろう。
ひっくり返されるまで、彼女が近付いた事にすら気付かなかった。
自分は強くない…寧ろ弱い部類に入るけれど、それでも彼女が強いということくらいはわかる。
そう認めれば彼女はあっさりとその身を引いた。
そして、当然のようにルフィの隣へと戻る。

「別に戦わなくても良いぞ」
「んー…でも、負けるわけには行かないでしょ。戦う気分になったら戦うよ」
「そうか。無理するなよ」

ルフィがぽんぽんとコウの頭を撫でる。
うん、と頷く彼女は笑顔だ。
そんな二人を横目に身体を起こしたウソップは、ススッとナミたちの近くへと移動。

「あの二人ってアレか?」
「…どうかしら。本人から聞いた事はないわね。どうなの、ゾロ」
「あ?アレってなんだよ?」
「あぁ、アンタってそう言う人間だったわね。もういいわ」

アレと言う言葉で内容を理解していないならば、彼に聞いても無駄だ。
そう判断したナミが追い払うように手を振った。
癇に障る彼女の行動は今に始まった事ではないので、文句は溜めた息と共に吐き出してしまう。

「幼馴染なのよ、二人。そこから先は聞いてないわ」
「ほぉー…」
「気にしてないのよね、きっと」

初めは、それなりに二人の仲の良さを色々と勘繰ったものだが、今となってはこれが当然のものと受け止めている。
一緒に居るのが当たり前で、スキンシップの多さも付き合いの長さゆえのもの。
少なくとも、二人を繋いでいるのは兄弟の親愛ではなく、男女の恋愛的な絆だ。
はっきりと言葉にして恋人と言う繋がりがあるわけではないようだが。
二人には、言葉で表せる関係など必要ないのだろう。

「それより、今は明日のことを考えましょう。こっちは5人しか居ないんだから、しっかり計画を立てないと」
「それなら俺にいい案がある!海岸への道は一本の坂道だ。それを利用すれば―――」

メンバーの中では比較的考えながら戦うタイプの二人が頭を付き合わせる。
本能のまま戦うタイプの三人は、その話に入ることもなく別の話題で盛り上がっていた。

「次はコックが欲しいなぁ。そう思うだろ、コウ?」
「そうね。とりあえず、餓死しないように上手く食料を使ってくれる人は要ると思う」
「確かにな。放っておくと用意した食料が一日でなくなっちまう」
「そうそう。泳げるなら魚でも捕まえられるんだけどなぁ…。ゾロ、捕ってきてよ」
「お前は何するんだ?」
「んー、応援?」
「動け!」
「だって、海に入ったら沈むし」
「そーだぞ、ゾロ!俺たちは沈むんだ!カナヅチだからな」
「自慢げに言うな!」

09.12.17