Free  act.21.5

「では、コウ様のご友人のお食事を届けてまいります」
「ええ。宜しくね―――って、ちょっと待った!」

今しもワゴンを引いて歩き出してしまいそうだった使用人の肩を掴む。
きょとんとコウを見つめる彼に、コウは慌ててそのワゴンの前に回る。
保温の為に被せられていた蓋を取り、彼女はそこに並んだ料理をじっと見下ろした。

「これ、私達が食べているのと同じように作られたもの?」
「はい。コウ様の客人ですので、粗相があってはいけませんので」
「それは問題ないんだけど…って事は、全く同じなのね?」

確認を重ねるコウに、彼はもちろんですと頷く。
行儀が悪いとわかりながらも、コウは並んだ料理の一つを指でつまみ上げて口に運ぶ。
そして、口に含んだ時点で気づいた。

「………本当に申し訳ないんだけど…これは出せないわ…」
「何か問題がありましたか?」
「中身が大いに問題ありよ」

それを飲み込むと、コウは苦笑を浮かべて厨房への扉を開く。
そんな彼女を追って、使用人の彼も先程出てきたばかりのその扉を潜った。

「コウ様!何が問題だったのですか?」
「…今日の毒は何?」
「ククルーマウンテンの麓で取れるアスミティル草です。致死量は大体約3mg」
「………あのね?一応彼らは普通の人で…毒に対して抗体がないの。そんな猛毒を食べさせられないわ」

コウが苦笑交じりにそう言えば、使用人は「あ」と思い出したような声を上げる。
ゾルディック家では毎回の食事に毒が盛られているのは日常の事。
コックも使用人も、それに対しての躊躇いや抵抗と言った感情が麻痺しているのだ。

「コックに作らせます」
「構わないわ。私が適当に作って持って行くから」
「しかし…っ!」
「偶には料理もしないと、仕方を忘れてしまうでしょう?手伝ってくれる分には歓迎って言っておいて」

そう言い終わるが早いか、「あなたも下がっていいから」と言って彼を厨房から出す。
暫しその扉を見つめて思案していた彼だが、すぐにコックらが居るだろう部屋へと向かった。
彼女の言葉を伝える為に。



コック総出で厨房が賑わう中、コウは彼らに勝るとも劣らない腕前を披露して料理を作った。
こうして、ゴンとクラピカ、そしてレオリオの命はギリギリの所で守られたのである。

06.02.04