Free  act.12.5

「だー!負けた!!」

キルアがダンッと横にあった木を殴れば、揺れた枝から葉やら鳥の巣やらが落下してくる。
コウは慌てるでもなく苦笑を浮かべ、鳥の巣を腕で受けとめる。
驚いた雛がピーピーと鳴き声をあげる中、コウは木の枝を仰ぐように上を見上げる。

「そんなに悔しいの?」

鳥の巣を片腕に移し、トンッと地面を蹴る。
一瞬のうちに彼女の姿が掻き消えたかと思えば、次の瞬間上から降ってきた声。
キルアがバッと顔を上げれば、自分の身長の5倍以上はあるかと思われる枝の上に腰を降ろすコウがいた。

「悔しいのはわかるけど、この子達が可哀相でしょう?」
「あ、ごめん」

いつもならばそんなちっぽけな命を気にすることなどない。
だが、何故かキルアは素直に謝ってしまった。
それに対して誰よりも驚いたのは彼自身。

「何か…姉貴に怒られた時みたいだ」

誰に怒られても謝る事は難しかったが、彼女だけは別だった。
自分の為、そしてそれ以外の誰かの為。
本心から自分を咎める彼女の声だけは、素直に受け入れられた。

「ごめんね、怖がらせて。もうすぐお母さんが帰ってくるから大人しく待っていなさいね」

彼女の言葉が伝わったとは思えないが、それでも雛は黙った。
くりくりとした眼でコウを見上げ、その首を傾げるような仕草を見せる。
雛に微笑みを残すと、彼女は枝から飛び降りてキルアの隣に立つ。

「ホンット…コウって姉貴そっくり」
「…そうなの?」
「うん。姉貴じゃないって言われても説得力ないくらいにな」

キルアは探るような視線をコウに向ける。
そんな彼の視線に焦るでもなく、彼女は笑みを返した。

「答えはこの試験が終わってから、ね」
「ちぇ!今教えてくれてもいいのに…」
「あら、それは無理よ?だって…キルアは私に負けたでしょう?」
「………折角忘れてたのに!」

06.02.04