Free act.07.5
「あ、コウ!!」
目聡くも廊下の向こうを歩いていたコウに気づくゴン。
そのまま通り過ぎる予定だった彼女は頭を左へと動かし、向こうの方に見える二人の少年に気づいた。
「ゴンとキルア。夜景でも楽しんでるの?」
窓に向かって長椅子に腰を降ろしている二人。
尤も、ゴンの方はコウを見つけた時点で腰が浮いた状態だが。
彼は勢いよく、キルアも愛想程度に、それぞれ頭を動かして頷いた。
「綺麗でしょう?特に、こうして町の上を飛ぶのは気持ちがいいわよね」
「うん!―――って、コウは慣れてる感じ…?」
「私は自分の飛行船を持ってるから。自家用機も一応あるし…」
後者は使わないから宝の持ち腐れだけど、とコウは苦笑する。
そんな彼女にゴンはポカンと口を開く。
キルアは彼の隣で「俺と同じじゃん」と呟いていた。
「何か…キルアもコウも…お金持ち?」
「俺の場合は俺自身じゃなくて俺の家、だって。コウはちゃんと自分で稼いでるんだろ?」
「そうね。これでもその道では結構名前が通ってるし…」
コウはキルアが自分自身ではないと言ったことに対してその心中で喜んでいた。
ふと、ゴンがコウの言葉にあっと声を上げる。
「ねぇ!コウってどんな仕事をしてるの?」
「…それは…秘密、かな。またそのうちに教えてあげるわ」
コウはその表情に挑戦的な笑みを浮かべて言った。
「所で…コウは2次試験の後半合格したんだよな?」
思い出したようにキルアが言う。
彼の確信的な質問に、コウは頷いた。
「皆が魚を捕りに言っている間にね」
「凄いよね!すしを知ってたの!?」
ゴンの眼が輝く。
自分よりも明らかに優れているものに対しての好奇心が彼の眼に映っていた。
と、そこでキルアが気づく。
「ん?って事はあの時“散歩でもして考える”って言ってたのは…」
「「すしがどう言うものか」を考えに行ったんじゃなくて、「どんなすしにするか」を考えに行ったの」
「だー!あの時コウについて行けばよかった!!」
ガシガシと自身の銀糸を掻き混ぜて悔しがるキルア。
コウはクスクスと笑って腰を上げた。
「そう言えば…二人とも、すしがどういう料理なのか知らなかったのよね?」
「うん」
「食べた事もないしな。一応形はわかったけど…」
二人の返事にコウは微笑んだ。
「さっきね、厨房を借りる許可を貰ってきたの。
昔馴染みに晩酌に呼ばれているから、それの軽いつまみでも作ろうかと思って」
久しぶりに酒でも飲もう、と言って自分を誘ったメンチとの約束の時間までは後一時間。
軽いつまみを作って、更にもう一品くらい作るには十分すぎる時間だ。
「美味しいすし…作ってあげましょうか?それとももう満腹?」
「「食べる!」」
即座に声を揃えた二人にコウは満足げに頷いて歩き出す。
背中でキルアとゴンが競うように長椅子から立ち上がり、急いで後をついてくるのを感じていた。
06.02.04